1.内観研修の動機

  昨年に妻の信頼を裏切るような行為をしてしまい、それをきっかけに、今のままではダメだという思いが強くなり、内観というものにたどり着きました。

 自分は、中毒、依存症のようなものがあるので、心理カウンセリングを受けようと思っていましたが、人からアドバイスを受けるのではなく、自分の内側から変えていく方法もあることを知り、研修を受けることを決めました。

 年末年始でしたので、本来であれば家族と楽しい時間を過ごすのですが、会社が始まってしまえば、一週間も時間をとることができませんし、妻も理解してくれましたので、受講いたしました。

 内観という言葉は、妻からはよく聞いていましたが、どうすれば内観できるのか、その方法が分かりませんでしたし、もともと私は自分の気持ちを相手に伝えることが苦手で、自分の感情や考えが何であるかを自分自身も分かっていないところもありました。自分のことを知りたい、という思いで、研修に申し込みました。

2.内観研修中の心境

 自分の気持ちすらよく分かっていない私にとって、内観法のシンプルさはありがたいものでした。本当に、この三つの事を思い出せば自分のことが分かるのか、と思っていましたが、食事中に聴いた先生方の講演や実際の内観者の言葉の助けもあり、意外と今までに考えたこともないような気持ちがあふれてきました。

 過去、多くの人々からたくさんの愛情をかけてもらっていたこと。育ててもらったこと。愛情にもとづく言葉をかけてもらったこと。子供の存在、彼らの笑顔すら、私に対するプレゼントであるという考え方には、とても感動しました。妻が毎月してくれている家事も当たり前のように思っていました。

 それに対して、自分がして返したことの少なさと、ご迷惑をおかけしたことの多さには驚きました。いかに自分中心の考え方であったか、他者とのつき合い、関係性を無視した生活を送っていたか、気付かされたのです。
また、自分の欠点や失敗を素直に認める。心に積もったアカを落とすことによって、心を開き、前向きな人生を歩むことができ、その後の人生を楽に生きることができるということも理解できました。実際、内観研修の中でアカを思い出し、表に(口に)出すことで、身も心も軽くなりました。

3.学んだことを今後どう活かすか

 普段の生活では、その日の朝食の内容も覚えていませんし、家族との会話もうわの空。一方、研修中に出して頂いた食事は全部覚えていたのには驚きました。すぐに忘れてしまうのは年齢のせい、仕事で忙しいせいにしていましたが、そうではなく、食事をつくってくれた妻に対する感謝の気持ちが無かった。食事が出て来るのが当たり前だと思っていたからだということが分かりました。また、内観中はできるだけ無駄な雑念を排除していたことも、食事のありがたみを感じることができたことにつながったと思います。

 「私は、いつ死ぬか分からない」。平均寿命である80歳まで生きるのだろうとぼんやり考え、まだまだ先のことだと思っていましたが、いつ死んでも良いように、生きていることに感謝し、生きているうちに、まわりの人々に感謝の気持ちを伝えたいと思います。

 生活をシンプルにしていく必要もあると思いました。インターネット、テレビ、メール、仕事、様々な雑多なものに囲まれて、押し流されるように生きていますが、自分にとって家族にとって、本当に大切なものは何か。死の直前になって、後悔することをしていないのか。「自分自身を知る」ことは、今後もずっと続くテーマだと思います。今、そのための出発点に立てたことは、本当にありがたく、幸せなことであると思います。

 これからの日々の内観が本番であるという言葉もいただきました。一日15分の内観の時間を持ちたいと思います。

 内観というものに出会えたのは、妻のおかげだと思います。ありがとう。

 最後に、研修中にお世話をして下さった、所長、スタッフの皆様、ありがとうございました。

*内観体験記は、ご本人にホームページでの掲載をご了解いただき、ある程度年数が経ったものです。内容は匿名性を保てるようにプライベートな部分は修正させていただいておりますのでご了承下さい。