「集中内観の体験」

 私の内観研修のことを初めて知ったのは、約3年前に宿泊したビジネスホテルに置かれた一冊の本からでありました。その内容はある男性の集中内観の体験記でした。内観という言葉は今まで参加した各種研修で知っていましたが、集中内観という7日間にも及び、その間はひたすら部屋にこもって考え抜く研修があるということは知らず、世の中にはすごい研修があるのだなぁ、と驚くと同時に少し興味を持った自分がいました。

 それから3年が経過し、私は大阪市東淀川区にある、ふうや内観研修所で集中内観を体験しました。会社経営が上手くいかず、人間関係もかつてないほど崩壊してしまい、極度の人間不信と自己不信におちいっておりました。そんな時、内観の存在を思い出し、家内に相談したところ、強く背中を押して頂き、集中内観の参加を決意したのです。勧めてくれた家内に心より感謝です。

 研修の前半は母親と父親のことを幼少のころから順を追って調べました。お世話になった事柄の多さに比べ、して返した事柄の少なさに驚きました。今まで親のしてくれていたことを当たり前だと思い込み、感謝の念が全くなかったのです。私は親に感謝しているつもりでしたが、内観を通じて今まで気づくことのできなかった数え切れない感謝に出会い、屏風の中で何度も涙があふれ出ました。両親の深い愛に気づくことで心が満たされていくことを実感する研修前半でした。研修に参加する前は、7日間も屏風の中にいれるだろうか?という不安もありましたが、研修2日目辺りからその不安はなくなりました。

 研修4日目から5日目には家内について調べ、嘘と盗みを調べました。家内のことを調べて泣けるだろうか?と思っていましたが、最初から泣きっ放しでした。結婚当初の家内のことを調べ、その光景を客観的に思い浮かべると、妙に家内が愛しくなり、感謝の念がわき上がるのです。私の今の家内に対する不満は相手に問題があったのではなく、全て私自身に問題の根源があることに気づかせて頂きました。

 嘘と盗みについては、今までの調べで感じた心の充足感がなく、最初は調べるのが苦しく、なかなか真剣になれませんでした。しかし先生から、無理はしなくて良いので自分らしく調べてください、とアドバイスされ、少し気が楽になり、自己反省を深めることができました。そしてこの嘘と盗みが研修後半の2度目の父と母に対する自分についての調べに大いに影響したのではないかと思います。

 研修後半の母親に対する2度目の調べでは1度目の調べで感じた感謝の念に加えて、強い反省の念が融合するようになりました。1度目の調べでは、充足感に満たされ、ただ喜びの涙でしたが、2度目では喜びと共にとても胸が痛くなる涙が止まりませんでした。とにかく一刻も早く恩返しをしたい気持ちにかられ、屏風の中で子供のように号泣しました。

 そして最後に2度目の父親に対する自分を調べました。この調べは私の人生観を変える生涯忘れられない一日となると思います。私は父親に対して大きな勘違いをしておりました。私は今まで一人で生きてきているように思っていましたが、それは完全な錯覚で、私は「生かされているのだ」と実感したのです。私が幼少の頃から43歳になる現在まで私を自由にしてくれ、そして許し続けてくれていることを私は気づけず、逆にがんじがらめにされ、父親の尻ぬぐいをしている気にさえ潜在的に思っていたと思います。しかしそれは全くの勘違いであることに内観を通じて気づかせて頂きました。私の失敗を許し続け、その私の尻ぬぐいをしてくれているのは父でした。

 研修初日に先生から、「過去が現在の自分を作り、現在の自分が未来の自分を作る」と教えて頂きました。私は内観を通じて過去の真実を知ることができました。それを気づくことによって現在の自分が少しは変われるような気がしますし、未来は大きく変わる!!と思えるようになりました。

 内観に出会えたことを心より感謝すると同時に橋本先生の絶妙なアドバイスや優しいお人柄、そして何よりも温かい心のこもったお食事をふるまって頂き、心より感謝申し上げます。この体験を心に刻み、我が人生をより深いものに精進させる所存です。

*内観体験記は、ご本人にホームページでの掲載をご了解いただき、ある程度年数が経ったものです。内容は匿名性を保てるようにプライベートな部分は修正させていただいておりますのでご了承下さい。